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私たち大人が、子どもたちに手渡しできること。それは、生きる力を育てる本ものの食体験  食育・料理研究家 坂本廣子さん
 子育ての最終目的が、子どもが自立して社会で生きることだとすれば、その目的に向かって、今私たち大人は子どもに何を手渡したらよいのでしょうか。子どもが育つには一見ムダに見えるいろいろな体験が必要です。効率一点張りでまっすぐな道をムダなく歩くのではなく、道草を食いながらその途中の風や草や虫と遊んではじめて、ほんとうの子どもの時間をもつことができるのではと思います。

 今の子どもたちは、私たちがいつの間にか持っていた体験の、ひょっとしたらその半分もないかもしれない。五感が働いてないんです。だけど生きていく基本は五感がフルに働いて感性をいっぱい持つことから生まれてきます。そうすれば、とても豊かな人生になります。その五感を動かす基になるのが、実は小さなうちの本ものの体験です。英語が早くしゃべれる、漢字が早く読めるようになる、そのことよりも大事なのは、自分にある五感が全部働いて、そして自分がすばらしいと思って育つことなんです。生きる力は食べるということと直結しているんです。生きる力に直結した食べるというしつらえを、どういうふうに整えてやるかというのが、私は保護者の役目だと思うんです。

 今なら、まだ間に合う。親である私たちの記憶に残っているうちに、次の世代に伝えておかなくてはいけない大切なことがたくさんあるんだと思います。それも親が必死になって言葉で言うより、キッチンで食べ物と面と向き合う経験を子どもがすることで自然に理解してくれるんだと気がつきました。「生きることは食べること」。「生きる力は理屈じゃない。」経験から得る自信がずいぶんと力をつけてくれます。そして、それが将来の自立につながっていくのです。

 20年ほど前に、小学生だけの料理教室をしたことから、6年生でも経験のない子は上手に切れない、小さくても出来るのは年の差ではなく経験の差だとわかりました。そんな時、子どもたちの偏食に悩む幼稚園の先生に出会ったことが子どもの料理教室を始めるきっかけに。その幼稚園で、70人の子どもたちに毎月1回自分たちの昼ごはんを作る料理教室を始めたのです。これが、現在の体験型料理教室の基礎になりました。

「1歳から包丁を」子どもたちは、いじらしいほど真剣に私たちの信頼に応えてくれる
 料理は刃物を使い、熱源を使います。危なくないの?とよく言われますが、子どもたちには使い方を間違えると危険だということを事前にしっかり教えておけばなんの心配もありません。

 「包丁の下に手を置かない」「熱い鍋に触らない」などのお約束をしてから子どもたちは実際に調理を始めます。子どもたちの年齢は1歳から6歳。むしろ大人より調理の作法を知らないまっさらな彼らは、素直に聞き入れるので、包丁や熱源の扱いをきちんと美しい動きで覚えることができます。

 20年前から現在に至るまで、さまざまな子どもの料理実習を行いましたが、病院に行くような大ケガや大事故は一度もありません。それはまかされた子どもがいじらしいほど真剣に信頼にこたえるからなのです。ちゃんと自分でやり始めたことだと納得するなら、包丁で指を切った時でも、子どもはまず泣くことはありません。本人いわく「大丈夫だよ」。「血がほかにつかないようにとめておこうね」と絆創膏を貼ると「同じことは二度としないぞ」と決意表明してすぐ調理へ戻っていきます。また一度自分がした失敗を近くの子がしそうになったら、ちゃんと注意してくれるんですよ。

 全然しゃべれなくてもできます。オムツをつけていても、魚を3枚におろして、天ぷらにして帰っていきます。ちゃんと説明したらできるんです。3枚におろすときなんかは子ども用の包丁と子ども用のキッチンバサミを使ってチョッキンって頭をおとして、キッチンバサミで肛門まで切り開いて取り出して、押さえてこっつんこっつんって「骨があたるのがわかるかな」と言うと、こっつんこっつんと真剣な顔してやって、きれいに3枚におろします。

魚をおろすのにハサミが大活躍。
できるだけ介助せず、子ども自身の力で乗り切らせる。
食育ビデオ・DVD(社)農山漁村文化協会「なぜ料理を体感させるの?」より。
食育・料理研究家
坂本廣子さん
ファーストフードや加工食品、テレビゲームや塾通い…子ども達をとりまく環境はお母さんのときよりずっと変化し、厳しくなっています。だからこそ、料理をつくる体験を通じて生きる力を身につけさせたいですね。
IHクッキングヒーターなら裸火がなく安全性が高いので、安心して子どもたちに本ものの食体験をさせることができますね。
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