| 子育ての最終目的が、子どもが自立して社会で生きることだとすれば、その目的に向かって、今私たち大人は子どもに何を手渡したらよいのでしょうか。子どもが育つには一見ムダに見えるいろいろな体験が必要です。効率一点張りでまっすぐな道をムダなく歩くのではなく、道草を食いながらその途中の風や草や虫と遊んではじめて、ほんとうの子どもの時間をもつことができるのではと思います。
今の子どもたちは、私たちがいつの間にか持っていた体験の、ひょっとしたらその半分もないかもしれない。五感が働いてないんです。だけど生きていく基本は五感がフルに働いて感性をいっぱい持つことから生まれてきます。そうすれば、とても豊かな人生になります。その五感を動かす基になるのが、実は小さなうちの本ものの体験です。英語が早くしゃべれる、漢字が早く読めるようになる、そのことよりも大事なのは、自分にある五感が全部働いて、そして自分がすばらしいと思って育つことなんです。生きる力は食べるということと直結しているんです。生きる力に直結した食べるというしつらえを、どういうふうに整えてやるかというのが、私は保護者の役目だと思うんです。
今なら、まだ間に合う。親である私たちの記憶に残っているうちに、次の世代に伝えておかなくてはいけない大切なことがたくさんあるんだと思います。それも親が必死になって言葉で言うより、キッチンで食べ物と面と向き合う経験を子どもがすることで自然に理解してくれるんだと気がつきました。「生きることは食べること」。「生きる力は理屈じゃない。」経験から得る自信がずいぶんと力をつけてくれます。そして、それが将来の自立につながっていくのです。
20年ほど前に、小学生だけの料理教室をしたことから、6年生でも経験のない子は上手に切れない、小さくても出来るのは年の差ではなく経験の差だとわかりました。そんな時、子どもたちの偏食に悩む幼稚園の先生に出会ったことが子どもの料理教室を始めるきっかけに。その幼稚園で、70人の子どもたちに毎月1回自分たちの昼ごはんを作る料理教室を始めたのです。これが、現在の体験型料理教室の基礎になりました。
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